第十一話「何故馬なのか」 蓬莱竜太  北海道から帰ってきた僕らは間髪入れずに「ブロンコ」という舞 台の稽古に突入した。2003年年明けの舞台であった。 ブロンコ。野生の馬という意味。馬。そう馬なのだ。主人公である 古山がずっと馬のかぶり物をして芝居をやるという舞台だった。人 間の役である。顔に傷を負い、その傷を隠しているという設定だっ た。つまり顔だけ馬。ハンズやドンキで売っているゴムで出来た馬 のかぶり物。顔から下は普通の服を着ている。古山の素顔が舞台上 で披露されることはない。最後ほんの一瞬舞台上でかぶり物を脱ぐ が客席にはほぼ見えない角度をとっている。古山を知らない人はカ ーテンコールでその顔を初めて見るということになる。途中一度、 茶色の馬のかぶり物が舞台上の机の上に置かれており、奥の見えな いところで古山の鼻歌が聞こえている。その鼻歌が近づいてくる。 いよいよ古山の素顔が明らかになるかと客席に緊張感が走る。しか し古山は白馬のかぶり物で登場、客席は大爆笑というシーンがあっ た。徹底して馬のかぶり物を貫いた。 物語の説明をしよう。皆さん鳥人間コンテストをご存知だろうか。 チームで飛行機を作り、琵琶湖を飛び、飛行距離を競うあれである。 馬は千葉の地元チームで設計を担当しており、物語は馬とそのチー
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