第十二話「年二回公演をやるっちゅうことはね」
蓬莱竜太
中野ポケットで「デンキ島」「ブロンコ」と大きめの劇場で上演
を続けていた僕たち。自ら風呂敷を広げ大きめの劇場で公演を打っ
ていたのは以前記した通りである。その甲斐あって動員も少しずつ
伸びていた。ここにきて年一回の公演を年二回にしようという提案
が持ち上がってきた。年一回というのはせっかくの流れを断ち切っ
てしまっているのでは、という意見からだったと思う。動員を伸ば
すためにはやはり年二回をコンスタントにこなす必要があるのでは
ないかと。この心理はわかる。現在モダンは年一回公演のペースに
戻っているが、今でも二回という声はあがる。どの劇団も年二回公
演が主流と言えるかもしれない。しかし、これはどちらかというと
演じる側の感覚だと僕は考える。年二回、劇団にコンスタントに戯
曲を書くというのは大変なことだ。その上でクオリティを高めてい
く、というのは書き手サイドからしてみれば過酷な試練と言える。
動員が増えてきた。注目もされてきた。その勢いをそのままに回数
を増やし劇団としてのギアを更に入れる。理屈はわかる。しかし、
そういう状況になってきたからこそ、質、クオリティは大事だ。そ
れで質が下がってしまえば何の意味もない。一本終われば、もう次
の作品の準備になる。果たして可能なのか。
よく作家の寿命は野球のピッチャーに例えられる。投げれば投げる
第十二話「年二回公演をやるっちゅうことはね」