第十三話「由希」と「M」
蓬莱竜太
「由希」。2003年夏上演。
「由希」とは当然、女性の名前だ。しかしこの芝居は男五人の芝居
である。僕たちはその頃十数人で出演する芝居を作っていたので、
半分以下の出演者の数ということになる。劇場は下北沢OFF・O
FFシアター。キャパは80人入ったら満員、100人詰め込んだ
らすし詰めの大惨事になるような劇場である。キャパも今までの半
分以下、しかも舞台空間となると半分以下どころではない。八畳あ
るかないか。お客さんは手を伸ばせば役者に触れる、という距離で
ある。僕たちが旗揚げ公演で使った劇場より小さい。わざわざ風呂
敷を広げて大きめの劇場を使い、やりたいことを優先させてきたの
にも関わらず、何故小さな劇場を使い芝居を打つのか。それは前回
も述べた「年二回公演」というお題目を劇団として掲げたからだ。
年二回同じことをやっていては作家として僕は摩耗し、消耗し、や
がて書けなくなるという予感があった。かといって年一回で良いで
はないかとも言えない。劇団はまさに波に乗り始めた時でもあった。
ここで年二回公演をやろうという考えは必然である。12年前の僕
らは若いし、表現の場は劇団しかない。無理とか無茶とか勢いとか
が大事な時期があると僕は思う。あの頃のモダンはまさにそういう
ことが必要な時期であった。そこで発明したのが「番外公演」とい
第十三話「由希」と「M」