いやむしろ少人数だと「構成」にあまり縛られないので、勝手に動
き出してくれる可能性は高い。役者も逃げ場がなく体当たりになら
ざるを得ない感じもいい。二時間役者が暗転なしで舞台をやり遂げ
ただけで割と感動的だったりする。
自分がやりたいことの真逆に発見や楽しさがあったり、宝があった
りすることがある。自分が考えている自分の方向なんて案外狭いも
のだ。あえて別次元のことをやってみるのはとてもよいかもよ♪
実はこの「由希」という作品、本当は男五人芝居ではない。もう一
人いた。
一瞬だけ後輩劇団のMくんが出演している。このMくん。うちの劇
団員の津村がスケジュール的に稽古途中参加となったため、代役と
してそれまで参加してくれていたのだ。しかし津村が参加してから
も僕たちはMくんを解放しなかった。やれ小道具だ、やれ音出しだ、
やれセット作りだ、全ての雑務をMくんに託していったのだ。Mく
んはそれをひきつった笑顔で引き受けてくれた。
そう、MくんはMだったのです。
さすがに古山が言い始めた。
「ここまで最初っから手伝ってくれてるんだから、少しくらい出し
てあげてもいいんじゃないの?」
出して、とは「出演」のことである。僕も、うーむそれはそうかも
なぁ、と考えた。
「え?いいんですか?」とMくん久しぶりに微笑む。
「じゃあ、暴走族幹部の手下って役で、一瞬出てくるか」と僕。
第十三話「由希」と「M」蓬莱竜太