「ありがとうございます」とMくん。
幹部会の間ずっとバイクを見張っていて、警察が近づいて来たのを
知らせに来るという役だった。
「だけど、族だからなぁ、その髪型じゃ普通だよなぁ」と皆口々に
言う。
「え?そうですか・・・?じゃあ・・・どんな」とMくん。
「・・・モヒカンかな」
「え?」
Mくんは半笑い。もしくは反笑い。
セット作りの日。埼玉のたたき場に午前中到着するとモヒカンのM
くんが汗だくでパネルを作っていた。
「おはよーござーす!」と挨拶するMくんは何かが吹っ切れていた。
しかもただのモヒカンではない。上から見ると十字になっている。
一つは縦モヒカン、横モヒカンはもみあげと繋がっている。文章で
は説明しづらいので後ほど挿絵で見てほしい。
「あいつ本当にやったんだな・・・」と誰しも思っていた。
MくんはMだったのです。
真夏のセット作りだったので終わったころには一同汗だくになって
いた。みんなで近くの健康ランドに行こうということになり、Mく
んの車で移動。
Mくん疲れていたのか、集中力を切らして、曲がるときに縁石のよ
うな突起していたものに車をこすってしまう。
車を降りて損傷を確認するモヒカンのMくんは、
第十三話「由希」と「M」蓬莱竜太