第十四話 五十嵐伝から十年か 蓬莱竜太  「五十嵐伝」記憶に障害を抱えた大学生の五十嵐が、学生プロレ スに挑戦する青春群像劇である。上演は2004年。旗揚げをして 5年目ということになる。この作品は後に「ガチボーイ」という作 品で映画化された。この公演以降、劇団以外の仕事も増えていった。 僕を外の世界へ連れて行ってくれた作品ともいえる。そして、この 作品で五番目のモダンメンバー小椋毅(おぐらたけし)がようやく 登場することになる。モダン論第二話以来の登場だろうか。そう。 僕がトイレで用を足していると隣に来て肩をポンとして強烈な一言 を残していったあの男。忘れた方、読んでいない方、是非第二話を ご覧下さい。学生時代に「天才小椋」という異名を持っていた先輩 である。我らが恩師金杉忠男に愛され、その劇団に引き抜かれた男 は学生時代我々の星だった。今思い出してみても、学生レベルを超 越していた技術の持ち主だった。僕たち劇団は今でこそ如何に技術 から遠ざかるかという闘いを強いられているわけだが、しかし僕は 技術そのものを否定はしない。それを持っているということは強烈 な武器である。小椋さんはメンバーの中で最も技術がある。という かそれ以外のメンバーは分類すると「ヘタ」の部類に入る。技術の ないものが素体で芝居をすることと、技術を持っているものがその 技術を手放すのとではまるきり意味が違う。そういう意味では小椋
第十四話 五十嵐伝から十年か