はモダン公演を観に来てくれていたのだ。「つくば寺セブンローズ」、
そうあのくだらない忍者の芝居です。第五話必読です。そして「由
希」。前回必読です。モダンの公演を観た小椋さんは心を揺さぶら
れてしまったわけですね。魂ですか。魂に火をつけたといいますか。
ええ。僕の芝居が。かつて彼が肩ポンした僕の作品がね。それを覚
えているのかいないのかは置いといて、彼は恥を承知で「俺もモダ
ンに出させてくれ!」と泣きついたとかいないとか。ええ、座長に。
そこは僕ではなく、座長なんですけど。涙と鼻水を垂らしながら
「ゴーイングモダン号に乗ぜでぐれー!!」と言ったとか言わない
とか。ええ、あくまで噂なので真実は知りませんがね。まぁ僕も、
座長から次回公演小椋氏が出演したいと言っていると聞いて、
「ん?小椋?ん~どの小椋かな~?小椋・・・あぁあの小椋ね。昔
肩ポンした人でしょ?へぇぇ、出たいんだ。そっかぁ、天才小椋で
しょ?そっかぁぁ出たいんだねぇ」
と、ひとしきり優越感を満喫していた。しかもモダン入りを渇望し
ているとのことだった。座長は色々と考えることがあって迷ってい
るようだった。僕は正直、モダン号に必要な乗組員だと思っていた。
演技も感性も別々の方向で偏っているうちのメンバーには小椋さん
のようなバランス感覚の役者がいてくれるとお互いがガチッとハマ
る。おかずばかりの劇団に白米が来てくれた!という感覚だった。
しかし僕は、
「そうねぇぇ、劇団員ねぇぇ!天才小椋が?肩ポンの?小椋が?言
ってるの?えぇぇぇ!?どうしようかねぇぇ!」
第十四話 五十嵐伝から十年か