になる。さながら食べるものに溢れかえった先進国のイメージ。贅
沢にどんどん捨てられる食材、ご馳走の数々。こんなに料理したい、
されたいという食材に溢れているのに。何か打開策はないかと最近
頭を悩ませているテーマである。
この「五十嵐伝」、有り難いことに千秋楽にはもの凄い数の立ち
見のお客さんで劇場が大変なことになった。客入れでまさかの三十
分押し。当時僕たちには制作担当などいなかったから、僕も客入れ
をやらなければならなかった。座布団を出したり、立ち見の場所に
誘導したり、立ち見の後ろに更に立ち見で箱馬(木箱)を出したり、
開演時間が過ぎていることを謝ったり、それはもう地獄の客入れで
ある。あまりに大変過ぎて、テンパって、一瞬便所に逃げたほどで
ある。スイマセン、ちょっと逃亡しました。定員より100人くら
いオーバーして詰め込んだ。もうこれは次回から制作を雇わないと
無理だと確信した。ありがたいことに誰一人文句やクレームを言う
お客様はいなかった。いい時代だったと言えるかもしれない。
先にも述べたがこの作品が僕を外の世界に連れ出してくれた。そう
いう意味では大切な作品であるかもしれない。主人公を務めた津村
は未だに「あれが俺のピークだった」と悲しい発言をする。再演を
望む声も多かった。しかしその時の僕たちではないとあれはやれな
い。劇団も人間同様歳をとる。「若い」と「若くない」は当たり前
だが全然違う。劇団は呼吸しなければならないというのが僕の持論
である。売れるから、評判がいいから同じような芝居を続けるのは
第十四話 五十嵐伝から十年か