僕は違うと思う。歳をとっているのに中身が全く変わらないのは、
奇妙な大人みたいで違和感がすごくある。若いからやれることがあ
り、若くないからやれることがある。常に劇団と共に歳をとり、過
去の作品は捨てていく。「五十嵐伝」もその一つだ。二度とやるこ
とのない作品だと思っていた。
しかしこの度、広島の企画でこの「五十嵐伝」を再び上演すること
になった。キャストはオーディションで決定した。皆、モダンが公
演をした当時と同じくらいの歳だ。彼ら彼女らが演じている姿を見
ていると十年前の記憶が在り在りと思い出される。あの時に戻った
ような、あれから僕だけが歳をとったような錯覚に陥る。もう四十
歳になるんだな、と自分の作品に気づかされる。
「五十嵐伝」から十年間。本当に必死にやってきた。来た球は全て
打つ覚悟で、止まることなく突っ走ってきた。ずぼらな僕が頑張れ
た唯一のことである。ここらで少し立ち止まり、過去の自分の作品
と向き合うのも悪くないかもしれないなと思う今日この頃。
第十四話 五十嵐伝から十年か
平
成
二
十
七
年
十
月
某
日
、
自
宅
に
て