第ニ話「旗揚げまでに語るべきいくつかのこと(後編)」
蓬莱竜太
もともと僕は作・演出志望で上京してきたので、自分の劇団をつ
くるという意志は強かった。演劇の世界に疎い僕は、どこかの門を
たたくという発想にもならず、自分で劇団をつくることが一番手っ
取り早いと思っていた。言わばメンバー探しの為の専門学校だった。
その計画通り、僕は卒業して同級生たちと劇団を立ち上げる。そこ
に津村、古山の名前もある。西條さんは卒業してすぐ野尻賞を片手
に裏方の世界に飛び込んでいく。小椋さんは先輩なのですでに卒業
しており、舞芸の講師であった金杉忠男さんの劇団で大活躍してい
た。こちらが一方的に知っているだけの存在だった。
「コインロッカーベイビーズ」という村上龍の小説が好きで劇団
名もそれにした。この劇団、同級生の男女十人くらいはいただろう
か、もっといたかな。そこそこの所帯だった。そしてわずか二作品
を上演して解散することになる。そのことはもう、書くも涙、語る
も恥ずかし、聞いて驚け見て笑えの世界なのだ。まあ一言で言えば
若かったということなのだが、それではあまりに乱暴なので少しだ
け書くことにする。書きたくないけど。