津村が先輩劇団の客演を終えて戻ってきたころだったと記憶して いる。津村は厳しい先輩劇団にもまれて生還してきたランボーだっ た。案の定、うちの劇団は甘いという説教が始まり、意識の低いや つとはやりたくない、次の公演は出ないと言い始め、それならそれ でよしという劇団員の空気もあり、別の日にじゃあ津村なしで次回 は楽しくやっていこうと劇団員と僕の家で呑んでいると、津村が現 れ、そういう前向きな姿勢があるなら俺も出るよと言い始め、あれ ?ってなり、いやそれはおかしいだろと僕がなり、何がおかしいん だと津村がなり、津村がいると皆津村に何も言えなくなるんだよと 僕がなり、それはそっちの弱さの問題だろと津村がなり、結局お前 そういう言い方になるだろと僕がなり、じゃあ出るなってこと?と 津村がなり、お前が出ないって言ったんだろと僕、だから出るって 言ってんだろと津村、だからもう面倒だからと僕、あ、そう、やっ てられねえわと津村。そして津村は家のドアを激しく閉めて去って いたのだった―。 あぁぁぁぁぁなんと恥ずかしい昔話。穴があるので入ります。
第ニ話「旗揚げまでに語るべきいくつかのこと(後編)」蓬莱竜太