(穴から出てきて)こうして旗揚げから1年も経たないうちに 「コインロッカーベイビーズ」は解散となった。上京して三年、 早々の挫折である。僕は作・演出になることを諦め、裏方の会社 に就職する。劇団ってこんなに大変で演劇ってこんなにつまらな いものか、こうやって東京にやってくる者達は挫折していくのだ なぁと思ったものだ。自分には何かあると誤解し、何もなかった ことに早々に気づかされる。一時はホモ説まで流れた津村とのケ ンカ別れ。馴れない体力勝負の裏方の世界。現場もよくわからず 馴染めずにいた。それでも何とか必死に生活していった。1年く らい経ったころだろうか、現場の人員が足りなくて社長に誰か知 り合いはいないか、と尋ねられ僕はふと、卒業してすぐに野尻賞 片手に裏方の世界に飛び込んだ西條さんを思い出し連絡を入れた。 (そう、ここに西條さんが登場してくるんです)西條さんは快諾 してくれて、現場では八面六臂の活躍を見せてくれた。それから はヘルプでよく西條さんに現場に来てもらうようになった。もう 同じ仕事仲間である。専門学校時代とは違う新しい関係だ。僕は 社員だったので、人を振り分けたり使ったり動かさなければなら ない立場だった。真夏の外現場、冬の早朝。西條さんはよく動い てくれた。  そんな頃、僕の携帯が鳴る。 それは解散して以来関係がぱったり途絶えていた津村からの電話 だった―。  と、引っぱりにもならないところで終えてみる。 次回、「モダンスイマーズ」旗揚げである。(つづく)
第ニ話「旗揚げまでに語るべきいくつかのこと(後編)」蓬莱竜太










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