その時ふと、結構人生とはドラマティックなものだなと思った。 人から見れば大したことではないことも、それを平凡と捉えるか劇 的と捉えるかで何もかもが変わってくるような感覚を持った。上手 く表現出来ないが、何か大事なコツのようなものを密かに手に入れ た気分だった。 『こういう人間模様はおもしろい気がする。あぁ、いやおもしろい ぞ。あ、こういうことを表現するのはありだな、それをもっとこう したらどうなる?』 いつの間にか作家の思考になっていた。僕は戯曲を構成していくパ ーツを初めて具体で捉えることが出来ていた。大袈裟に言わせて頂 ければ、その時僕は劇作家になったとも言える。  書きたい。いや、もう頭では書けているのだ。しかし今更どうし ろというのだ。知っている役者達はすでに頑張るべき場所を見つけ て走っている。僕は思春期の中学生のように欲求ばかり身体の中で 肥大するのだが、爆発させる場所を失っていた。嗚呼、出たがって いるのに出せないもどかしさよ。一句詠みたい。 「もどかしい、ぎざもどかしや、もどかしす」 そんなもどかしさの中、日々を送っていった。状況は何も変わらず 現場をこなす毎日。時々は先輩劇団や知り合いの劇団の舞台監督を やり、それ以外はイベントの仕込み、ばらし、コンサートの仕込み、 ばらしを徹夜作業でやったりする。一度ドロップアウトした身、今 更芝居をやりたいなどと声をあげる恥ずかしさと誰にも言えない欲
第三話「動機、欲求、始動する」蓬莱竜太