求との境で苦しんでいた。
そしてついにその日がやってくる。
幕張メッセか東京ビックサイトの現場終わり、西條さんと地下鉄
有楽町線に乗って帰宅していた時だ。
「一回でいいから、公演やらない?」
突然の西條さんからの申し出だった。西條さん曰く、最近は観る芝
居観る芝居面白いと思えない。なら一度でいいから自分が面白いと
思う役者を呼んで面白いと思う芝居を作ってみたいんだよ、という
ことだった。若武者感は程よく陰り、大人の武士感を身にまといつ
つあった西條さんは何となくいい感じの雰囲気で僕に作演出を依頼
してきた。僕にしても渡りに船である。心の中で躍動するものを悟
られないように、
「ふーん、そうなんだ」
と冷静ぶっていたように記憶している。まぁ西條さんがそんなに言
うなら考えてみるか的な雰囲気を前めに出していた。
「で、西條さんが思う面白い芝居って、具体的にイメージあるの?」
と尋ねた。これは結構大事な質問で、僕が今書きたいものと西條さ
んが面白いと思うものが大きく離れているとつらいものがある。西
條さんは、
「うん、あるよ」
と答えた。
「どんな?」
第三話「動機、欲求、始動する」蓬莱竜太