すると西條さんは、「えっとね、芝居のラストが、ちゃんちゃん♪ ってやつ」 僕は一瞬フリーズする。 「え・・・ちゃんちゃん?」 「そうそう、芝居のラスト、ちゃんちゃん♪って終わるやつ。なん か、そうやって終わりたいんだよね、でんでん♪って」 「・・・」 西條さんの横顔は真顔だった。何かを見つめていた。 僕もその真顔に合わせて真顔でいることにした。電車は揺れていた。 「・・・」 「・・・」 その、ちゃんちゃん♪に至るまでの中身の話を僕はしばらく待って いたが、西條さんはもう全てを言い切ったような、確信に満ちたオ ーラを醸し出し完結していた。 「面白いと思う芝居はラストがちゃんちゃん♪で終わる芝居」 中身ではなく終わり方の話なわけで、もの凄い話である。 まぁいいか。そこは今考えないようにしようと僕は思った。今のは 一旦忘れよう。それより作演出が再び出来るという喜びを噛み締め ることにしようと思った。 キャスティングは西條さんに一任した。
第三話「動機、欲求、始動する」蓬莱竜太