第四話「旗揚げ『モダンスイマー』」 蓬莱竜太  「モダンスイマー」という作品は高校水泳部の話である。舞台は 千葉県の小さな無人島(架空)で、毎年遠泳も兼ねてそこで合宿を しているという設定だった。乗って来たゴムボートが「イジメられ 部員」の癇癪によってメチャクチャにされて、困った、帰れないぞ、 天気悪くなってきたぞ、波が高くなってきて助けも呼べないじゃん、 やばくね、という話である。部活に馴染めない唯一の本格派スイマ ー、その馴染めない雰囲気にどこか嫉妬して嫌みがこぼれてしまう ムードメイカー、何故かそんな状況下で思いっきり女にフラれる部 員、そんな状況下で男をふる女子部員、マネージャー、カナヅチの 部員、根が暗く嫌みで孤立している女子部員、その女が嫌いで更に 孤立に追いやる部員、そんな男女の群像劇であった。  99年冬、場所は高円寺の明石スタジオという劇場で4回公演だ った。キャストは他にもONEOR8の作・演出である田村、同劇団 員の野本、専門学校の後輩にあたる女優三名を呼び、8名の編成と なった。僕を入れて総勢9名。制作もいなければ舞台監督もいない、 本当に9名だけの公演だった。最初は集団名すら存在しなかった。
第四話「旗揚げ『モダンスイマー』」蓬莱竜太