いかないが、高さは1・5メートルくらいはあったろうか、小劇場 で見ると充分「おおっ」となる大きさの鳥の頭だった。重さは問題 ないが二人掛かりで持たないと手が回らないといった感じである。 やったぜ、ハッタリかませるぜ、とワクワク。 しかし、だ。スタジオには舞台袖というものが存在しない。専門用 語でフトコロというのだが、フトコロがない。つまり鳥の頭をしま っておける場所がない。当然舞台袖からズズズズと現れる演出など は出来るはずもない。なのでやり方は一つしかない。客席の奥から 舞台に向かって客の頭上をズズズズである。しかし奥からと言って もスタジオである。そのストロークはわずか5メートルもあるかど うか。おまけに、ここが最大のポイントなのだが、芝居開始前から 吊っておくしかないのだ。なのでスタジオに入場してきてお客は一 番最初にその鳥の頭を見ることになる。「?何あれ?」となる。も う最初に見ちゃってるのだ。その鳥の頭がわずか5メートル動いた ところで、しかも狭い空間で自分の頭上を通過したぐらいでは全く 気づかない。皆舞台上を見ているわけだからね。新橋演舞場なら客 席が広いし、奥から舞台までの距離が相当あるから8割の客は自分 の頭上を通過した後、それを視野に入れることが出来る。しかしス タジオは無理。大体5秒くらいで終わっちゃうんだから。しかもそ の操作してるの演出の僕なんだから。まぁ全てが素人の発想である。
第五話「忍者の話だ『つくば寺セブンローズ』」蓬莱竜太