「いや、やっぱり無理だ。ゴメン今回は無理」と言い切った。 相撲でいうとうっちゃられた。僕が逆に土俵の外に押し出された。 自販機でいうと返却レバーを押され、今まで入れたお金がジャラジ ャラと返ってきた。 あの座長が断腸の思いでうっちゃったのだ。これはもう説得出来な いし、これ以上説得するべきではないとも思った。 しかし、やはりモダン公演を2年も空けることは僕には考えられな いので、次の公演は僕が自分でやるので、モダンスイマーズの名前 はそのまま使わせほしいと打診した。西條さんは快諾してくれた。  そして僕は海底油田の話を書いた。 皆さん、「アビス」という映画をご存知だろうか。海底に小さな基 地のようなものがあり、そこに穴掘りの作業員達が生活しているの である。石油を採掘している。単にそれがしたかったのである。  地上と隔離された海底という密室で起きる作業員たちの悲喜こも ごも。人間模様を描いてみたかった。近未来の日本、青森沖の海底 に油田が出来たらという設定だった。昨日までいたはずの作業員が 一人いない。というところから物語は始まる。陸にあがるには申請 をして十何時間もかけて気圧を陸のものに戻して行く変圧室に入る 必要があり、そこは使われていない。ではどこに?という展開だ。 これも今こう書くと面白そうだと思うのだが、全く僕の腕が伴って いなかったと思う。ほんとに。自分の作品だけは終わってみると色 褪せて感じてしまうのは何故だろう。まぁそれがあるから次こそは
第六話 海底の話だ『ベリーブルーベリー』蓬莱竜太