と思って次に向かえるのだが。  座長不在とはかくも大変なものなのか、と痛感した舞台でもあっ た。キャスティング、金銭的なこと、大道具、小道具、劇場に入っ ての仕切り、何から何まで座長任せだったことに今更ながら気づく 始末。それでいて怒ると当然怖い座長不在により、僕もついつい怠 けてしまうという副作用まで起きてしまう。「座長絶対必要」とい う漢文のような文字が僕の頭に貼り付いた。  本番中舞台上でオシッコを漏らした俳優がいた。 唐突で恐縮だが、どうしても記しておきたい。この役者は客演だっ た。僕の中でも天才役者と認定する一人でその後も何度もモダンに は出演してもらっている。一風変わったやつではある。その男が本 番中舞台上でオシッコを漏らした。いや、このエピソード、複雑な 話でもオチがある話でもない。文字通りである。オシッコに行きた い俳優がいて、間に合わず、舞台上でオシッコを漏らしたのだ。僕 はただ記録としてモダン論に記しておきたい。  第三回公演「ベリーブルーベリー」という作品で、本番中に舞台 上でオシッコを漏らした俳優がいた。  これでいい。 なんか妙だとは思ったのだ。やつは稽古でも見せたことのない奇妙 な動きをしているのだ。こぶしを振り上げボウコウのあたりという
第六話 海底の話だ『ベリーブルーベリー』蓬莱竜太