第八話「デンキ島とは」 蓬莱竜太  「デンキ島」とは北陸に設定を置き、架空の地方都市を舞台にし た若者達の群像劇である。僕は思春期を石川県で過ごした。僕が過 ごした思春期の時代やその土地が持つ特有の匂いを舞台にしようと した。  僕は転校生だった。そこは一年中曇天、灰色の世界だ。日本海の 黒い海。勿論冬は雪が降る。雪に打たれながらあぜ道を老婆が荷車 をゆっくり押して歩いているような松本清張の世界である。今では そういう世界観も楽しめるようになってきたのだが、思春期はとに かく嫌で仕方なかった。早くそこから抜け出したかった。陰気に感 じていた。土地だけでなく人にもそう感じていた。人を信用しない、 本音がわからない、噂話を好む。天気と一緒でカラッとしてない。 根拠はないが絶対気候の影響があると思うな。僕にとっては怖い土 地だった。高校を卒業してすぐに東京に出た。しかし僕のように上 京する同級生はほとんどいない。皆近場に就職したり近くの大学に 行ったりする。僕にはそれが信じられなかった。一体ここに何があ るんだと本当に不思議に思っていた。しかし彼ら彼女らには生まれ 育った土地なのだ。今ならわかる。それがごく自然なことなのだ。 転校生であった僕はその土地に馴染もうとしながらも好きになれず、
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