そこで生活している自分をいつもどこか俯瞰のカメラで見ていた。 順応することに必死なのだがいつも客観がある。矛盾の苛立ちがあ り、若干人格も曲がった気が…。僕はその土地に引っ越して変わっ たと思う。それがいい変化か悪い変化かは簡単には言い切れないの だが、とにかく引っ越す前の自分と引っ越したあとの自分とでは別 の人間だ。僕自身、人を信用しない、本音がわからないと言われる ような人間になっていた。土地が人に与える影響の強さを感じざる を得ない。上京して実家にはなかなか帰らなくなった。帰りたくな い土地だった。(今はそんなことないよ)上京して七年、僕はそん な帰りたくない土地のことを描こうとしていた。 何故か。 それは「東京」というものにある種の不可思議さを感じてきたこと に起因する。  人には抗えないものがある。住む土地もそうだ。生まれてくる家 もそうだ。隣人も選べない。自分で選べるものはない。人は皆抗え ないものに影響され、その抗えないもので人間が形成されていると 言ってもいい。大げさな表現をすればそれは「宿命」のようなもの だ。生活環境は宿命だ。上京してからは色々なものが選べるように なった。もちろん全てではないが、それでも選択肢はかなり広がる。 「選べる生活」に魅せられて上京したのかもしれない。宿命から逃 れたくて東京には人が集まる。住む場所、関わる人間、仕事、東京 は選択肢に溢れている。さてこの「選べる」というのが実はまた難 点で、そこには色々な落とし穴があるのだが、それは別の深い話に
第八話「デンキ島とは」蓬莱竜太