なっていくのでまたの機会にしよう。とにかく上京して七年間、僕
は選べる人たちの選べる生活というものを見てきた。その思い上が
りも能天気さも目の当たりにしてきた。東京は選べるという幻想を
ちらつかせながら、人をどこかの闇に連れていく。皆自分が何か選
択した、選んでいるような顔で、そのつもりで街を歩く。無論僕も
例に漏れてはいない。その中の一人だ。しかし、それは一体何だろ
うか。実は全てが既に用意されてあるものだ。カタログに載ってい
るものだ。選んでいるつもりが、選ばされている。簡単に手軽にカ
タログのフィクションを真似て、模倣して、笑っている。システム
は進歩するとどんどん簡単に便利になるように、東京はとても手軽
な街だ。同じような人間を量産し続ける工場だ。これが日本の中心
なのか、という不可思議さを感じるようになっていた。
それから北陸のあの土地のことをよく考えるようになっていた。
僕が嫌いなあの土地。あの土地に生まれ、何かを選ぶことが許され
ない環境に生まれついてしまった男の話はどうか。どこかに行くこ
とが許されない男。その現実を幼くして受け入れ、覚悟した男の話。
彼の周りには選ぶことが許されている幼なじみ達がいる。彼だけが
許されない。しかし彼の生き方は死んでいると言えるのか。選んで
いる者は生きていると言えるのか。彼は決して負けない。都会から
遠く離れた日本海に浮かぶ小さな島で人知れず誰に見られるわけで
も認められるわけでもなく、それでも彼は負けない。あの土地の中
で負けないで生きている男は何かを選んだような顔をして都会に生
活している僕らを打ち負かす。いや、打ち負かしてくれという自虐
第八話「デンキ島とは」蓬莱竜太