的な願い、衝動があった。それは洗練された風のものや、お洒落風 のものや、脱力風のものや、生きてるだけで儲けものだよという前 向き風のキャッチコピー風のようなものを、打ち負かす。自尊心を 示すためにあるような飲み会も、アクセサリーのような流行りも、 誰かが作為的に作った主流も、カタログのような情報も、人を盛り 上げる上手いトークも、馴れ合いや弱さが生む仲間も、意味不明な ハイタッチも、芸能も、アイドルも、彼には関係ない。彼の前では それらは無意味だ。あの黒い海の中、あの白い吹雪の中、陰鬱とし た曇天の世界の中で、彼の生き方は遠く離れた都会の僕たちを打ち 負かす。高校時代から大人と呼ばれる歳になるまでの彼らの群像劇。 決してオシャレな話ではない。ポップでもシニカルでもない。古い 新しいは関係ない。これが僕自身の衝動。やりたいこと。見たいも のだ。 ヤンキーは出てくる、スケバンは出てくる、全編北陸弁、日本海、 イカ釣り船、ヤクザの息子(実在しました)。不遇な主人公。都落 ちしてくる幼なじみ。スイカ畑の権利争い。  台本を読んだ後輩に、Vシネですか?って真顔で言われた。ポッ プさもお洒落さの欠片もない。皆の心配顔、蓬莱今回はやばくない か?とメンバーにも言われた。何故か既に敗戦ムードが漂っている。 本気でこれをやるのかというムード。まぁわかる。その心境よくわ かるよ。僕だって自信なんかない。こんな北陸ド直球の芝居不安だ
第八話「デンキ島とは」蓬莱竜太